2010年05月09日

圧縮空気で動くエアカー(その2)

圧縮空気タンクを搭載して走るエア・カーの続きです。

別サイトの連載記事は終わりにしましたが、書いていないことはたくさんあります。

2009年11月、カリフォルニア大学バークレーの研究者が、エア・カーの経済面および環境負荷面の評価を行った論文を発表しました。
エア・カーが学術論文にとりあげられるようになったということでも話題になりました。

この論文の結論は、エア・カーがコストでもCO2排出量でも、ガソリン車や電気自動車に劣る、ただし圧縮空気とガソリン車のハイブリッドならコスト面、重量面でのアドバンテージがある、というような内容でした。(単純化しすぎですが)

この論文に対しては、MDI社が直ちに反論し、法的措置に訴えると言ってました(本当に訴えるかどうかは分かりませんが)。
これら2つの文献は、下の「参考情報」に挙げてあります。

今回は、MDI社の反論とは別の観点で、このバークレーの論文について述べます。

バークレー論文では、ガソリン車、電気自動車、エア・カーについて、米国およびドイツの2カ国で比較しています。

圧縮空気は、電力でコンプレッサーを動かして作りますので、もとのエネルギーは電力です。
国によって、電力のCO2排出量原単位(1kWh発電するときに排出するCO2の量)は異なりますので、エア・カーを、どこの国で走らせるかによって、走行kmあたりのCO2排出量は異なってきます。

バークレーの研究者が、なぜ、米国とドイツを選んだのか、論文には明記されていません。米国の研究者なので、自国を選ぶのは当然でしょう。あと1カ国は欧州からドイツを選びました。
自動車産業が盛んな国だからでしょうか。

さて、国を選んだ基準は何だったにせよ、その選択によって、ある方向のバイアスがかかることになりました。


米国とドイツの共通点は、石炭火力の比率が高く、電力のCO2排出量原単位の大きさが先進国で1,2を争う国だということです。

それに対して、MDIのAIRPodが、まず発売されるフランスは、発電の大部分が原子力なので、電力のCO2排出量原単位は米国、ドイツよりもかなり小さくなります。

日本も、米国やドイツと比べると、電力のCO2排出量原単位は小さいです。


したがって、もし、バークレーの論文が、米国とドイツではなく、フランスと日本を対象に書かれていたら、結論は違ったものになっていました。(エア・カーの環境負荷が小さいという結果になっていました)

バークレーの論文をとりあげた報道はたくさんありましたが、内容をよく吟味せず、論文の結論だけを引用したネガティブな内容の記事が多かったです。


エア・カーの評価は、前提条件のおき方によって結論が正反対になる、そんな微妙なものです。
端にも棒にもかからない技術、というわけではありません。

今、電気自動車やリチウムイオン電池には膨大な投資が行われています。
その1%をエア・カーに投じるという選択もあってよいのではないでしょうか。


関連記事:
圧縮空気技術を応用したエア・カーの開発状況と普及課題(1)
圧縮空気技術を応用したエア・カーの開発状況と普及課題(2)
圧縮空気技術を応用したエア・カーの開発状況と普及課題(3)
圧縮空気で動くエア・カー

参考情報:
Economic and environmental evaluation of compressed-air cars
Environmental Research Letters  (October-December 2009)

the Berkeley Mistakes
(MDI) 

posted by 竹内敬治 at 18:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 圧縮空気自動車 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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